「親もなし 妻もなし 子なし 版木なし 金もなければ 死にたくもなし」
この絶望的な狂歌は1791年に仙台藩士である林子平が作したものです。
諸外国、特にロシアの脅威を書いた海防の書物「海国兵談」は世の中を乱すものとして徳川幕府から没収されました。
56才で亡くなるまでの約1年間、蟄居を命じられ、狭く暗い部屋に幽閉された林子平。
没してから子平が予告したようにロシアが通商を求めるようになり、幕府は海防を強いられるようになりました。

実際に松島湾にも砲台を設置しました。
(注:写真の島ではありません。)
現在、東北大学附属図書館と仙台市博物館には「三国通覧図説」「海国兵談」の現物が所蔵されています。
江戸の書店屋である菅原屋市兵衛が出版をしています。
市兵衛はNHK大河ドラマ「べらぼう」で蔦屋重三郎を推してくれる仲間の書店屋として描かれています。
ちなみに菅原屋は杉田玄白の「解体新書」、平賀源内の「物類品質」なども出版しています。
時代を先取りしすぎた悲劇の武士が仙台藩にいたことは頭の隅に入れていてよいかと思います。