長野県「おば捨て山」(長野県ではおば捨てといいます)という民話があります。
これを読むたび、人間の情として,子をいつくしみ育てた親の気持ちが、心に染み入り、この私でさえも、涙腺が緩みます。
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昔,信濃の殿様は,大変きれい好きで,醜いものや汚らしいものが大嫌いでした。
人間も年をとると醜くなるからということで,年をとったものを殺す命令を国中に出しました。
ところがあるところに,大変親孝行のお百姓がいました。
彼は,年老いた母をとても殺す気にはなれませんでした。かといって,殿様の命令を守らなければ大変なことになります。
その息子は母を山に隠すことを思いつき,ある日母を背負って山に登っていきました。ところが、母は山に登っていく途中の道々で,木の枝を折っては,道に捨てていくのです。その理由を尋ねても,母は笑うだけで答えませんでした。
いよいよ山の中程にきて,息子は母に,ここに連れてきた訳を話しました。
「私のようなものは,もう役に立たないから,どこにいても同じこと。死ぬときがくれば死ぬまでのこと,私をここに置いて,おまえは安心して早くお帰り」と言うのでした。
息子は,後ろ髪を引かれる思いをして,山を下りていきました。
すると,今登ってきた道に,木の枝が落ちていて,迷子にならないで帰れるようになっているではありませんか。それを見た息子は,「こんなに私のことを思ってくれる母をどうして山の中に捨てて置くことができようと,山に引き返して,再び母を背負い家に帰りました。
(後略)
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今回は、解説はなしです。
オープンエンドで終了いたします。
