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◆教育長室から(若い教育者へ)


2021/12/07

いじめに対する教師のスタンス

| by 教育長

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  今回は、
「いじめ」に対する教師のスタンスをお話しします。
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 「いじめ」に対する教師のスタンスを述べる前に質問です。
 下のどれがいじめだと思いますか。
   ・清掃や当番など,自分のやるべきことを他の児童にやらせる。
   ・体操服や教科書,文房具など,忘れ物を他の児童に借りに行かせる。
 ・ノートを人にとらせたり,宿題などを他の児童にやらせたりする。
 ・自分のカバンや荷物などを,無理に他の児童に持たせる。
 ・本人が行きたがらないところへ,無理に誘って連れて行く。
 ・昼食時,給食のおかずを無理に取ってしまう。
    ・金銭や文房具などを借り,そのまま返さない。あるいは捨てる。
 ・金をくれといったり,金を都合してこいと言う。
 ・かげ口を言ったり,ありもしないことを言いふらしたりする。
 ・嫌なあだ名とか,気にしている弱点をズケズケと人前で言う。
    ・他人の身体のことや家庭のことを悪意をもって言いふらす。
 ・人の教科書やノートなどをわざと隠したり,作品を壊したりする。
 ・自分では直接しないで,他の児童を使っていやがらせをする。
    ・他の児童に命じて,暴力をふるわせる。
 ・遊びだと言って首を絞めたり,押さえ込んだりする。
 ・たいした理由もないのに殴ったり,蹴ったりする。
 ・年下の子に,おじぎやあいさつを強要する。
 すべて、いじめが正解。


 これは比較的分かりやすいいじめですが,最近のいじめは,遊び・ゲーム感覚で,しかも,流動化してきています。昨日のいじめられっ子が,今日はいじめっ子。誰でもがターゲットになります。


 「いじめは昔もあった。いじめたり,いじめられたりしながら,その中で子どもたちは強くなっていく。そんなに目くじらを立てることもあるまい」と、その程度の認識の教師はまだいます。そのような教師に限って,いじめられた子どもに次のような言葉を投げかけ,いじめがすっかり解決したと勘違いしている場合が多いです。「いじめられるお前にも責任がある」「それくらい我慢しなさい,昔はもっとひどかったんだから」「もっと自分に強くなれ」「いちいち気にしていたら,これからどうする。生きていけぞ」などなど。


    しかし、最近のいじめは,そんなに甘くはありません。いじめは,どの子にも起こりうるという認識と危機感をもつことが大切です。これがまず一つ目です。

 
 二つ目は,いじめは,早期発見,早期対応を心掛け,事実関係をしっかり把握することです。
 いじめの芽を摘むのは,早ければ早いほどよいです。できるだけ,早期解決を心掛けた方がよいが,焦りは禁物です。何事も,事実関係をしっかり把握した上で,対応しないと,大変な結果を招くことになります。「あの先生は,うちの子どもだけが加害者というのよ。みんなやっていたのに,どうして,うちの子だけ」といった具合になることもままあります。慎重な対応が肝要です。心して当たりたいものです。どんな対応してよいか分からないときは、先輩教師に聞いたり、チームで対応したりすることが肝要です。

 
 三つ目は,観衆,傍観者の指導も忘れずに行うことです。
    はやし立てたり,傍観する行為も,立派ないじめであることを,何度も,何度も繰り返し指導することを忘れないことです。時間がかかるが,根気強く,いじめの芽を摘み取ることが、いじめ撲滅の一番の近道になります。

 
 四つ目は,継続的に支援をすることです。
  「いじめが解決した。ハイ,よかった」というわけにはいきません。心に痛手を負ったことを考えると,単純には,そうはいきません。いじめた子ども,いじめられた子どもも,それぞれを継続的に支援していかなければなりません。いじめられた子どもの立場に立った指導は,後段で詳しく述べます。

 
    五つ目は,対処療法的な指導よりも,予防療法的な指導を常に心掛けておくことが重要です。
  いじめが起きた。「すわ,指導」のような泥縄的指導よりも,常日頃の指導が大切なってきます。友だちを互いに尊重するために「くん」や「さん」を付けて呼ばせたり,道徳授業を充実させたり,分かる授業を展開したり,当たり前のことを当たり前にきちんと指導することが特に大切です。子どもが生き生きして,活気のある学級からはいじめは生まれせん。教師は,この事実をもっと重く捉えるべきで
す。

   いじめられた子どものフォローについても述べてみます。
   いじめられた子どもの心は極めて不安定です。「自分の気持ちが分かってもらえられただろうか」「いじめられる自分も悪いと怒られるだろうか」「いじめをばらしたと言って,もっといじめがひどくなりはしないだろうか」「明日から,どこにいればいいのだろうか」


   そこで,まず,最初にすることは,心の安定を図ってやることです。「先生はどんなことがあってもあなたをいじめから守り通してあげる」という強い姿勢こそが,子どもの心の安定を図る一番の良薬です。

    次に,事実を関係をしっかり把握することです。
 いじめは,先述したしたように早期発見,早期対応を心掛け,事実関係をしっかり把握することです。なお,事実関係を把握する際に注意してほしいのは,加害者と被害者を同席させないことです。同席させると,いじめられた子どもの本当の叫びを聞くことが出来ません。これは,事実関係把握の際の「鉄則」でもあります。

   事実関係をもれなく把握したら,いじめられた子どもが,何をしてほしいか,何をしてほしくないかを聞き,今後の方針を子どもと相談して決めていくことが寛容になります。これは最も大切なところです。場合によっては,先生にしてほしいこと,クラスの子どもにしてほしいことなどを分けていくのも一つの手です。いずれにせよ。十分に時間をとって対応してほしいと考えています。

 
 このあとは,いじめられた子どもの居場所を確保することです。
 いじめられた子どもが,全てを話せば,話すほど,もう教室に戻れない自分に気付きます。このような不安を取り除くために,本人の居場所を考えてあげたいものです。例えば,受け皿となってくれる子どもやグループを探したり,安心していられる場所(保健室など)を探したりすることも,いじめられた子どもの立場に立った指導の一つと言えます。

 
 最後は余談。心理的効果の一つにハロー効果というのがあります。この効果は,ある対象を評価するするときに,顕著な特徴に引きずられて,他の特徴についての評価がゆがめられる現象のことをいいます。例えば,子どものお父さんが超難関大学出の弁護士なら,その子どもは学力だけでなく,人格的にも優れていると勝手に思い込んでしまうなどは,そのケースといえます。


   しかし,超難関大学出の弁護士の子どもだからといって,人格的に優れているとは限りません。ところが,教師の中には,ハロー効果をまともに受けて「人格的に優れている」と勝手に思いこんでしまう教師も中にはいます。そんなことだから,この子に限っていじめはあり得ないと弁護し,いじめが行われているのにまともに取り上げず,事態をさらに悪化させてしまう場合も出てきます。「まさか?」と疑いたくなるような,本当の話である。              
 恐るべしハロー効果です。                              (ハロー効果は,「後光が差す」ということで「後光効果」とも呼ばれています。)    



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